| 4.連載小説・第4回 Sweet escape |
| (Text by 上岡千伽子 / Illustration by 稲田真理子) |
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『では2週間後の火・水曜などいかがでしょう。宿はこちらで見つけておきます。なんだか思いがけず、嬉しい。』
『おっけー、ありがとう。決まり次第、連絡ください。楽しみにしています。』
『山梨の方にいいとこを見つけました。山奥の温泉で溶岩焼きという料理が名物らしいです。ぶどう狩りもシーズンにはいるみたいだよ。』 |
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『山梨?ちょっと遠くない?でもたまには趣向を変えて行くのもいいか。なにより溶岩焼きが気になるし!そこに決定♪』
『当日、迎えに行くよ。』
『え?こっちまで来るの?いいよ、かえって遠くなっちゃうじゃん。宿の場所を教えてくれたらそこに向かいます。ゆるーい旅が目的だからね。』
『了解です。では当日。宿の名前は・・・』
甲府の駅からバスで30分揺られ、10分ほど緑の溢れる林道を歩く。何度も立ち止まって深呼吸をする。いつも行く箱根や熱海ほど観光地していない雰囲気に気分が良くなる。今度から甲府も候補地にいれよう。緑の空気が体にたっぷり染み込んできた頃、目的の宿に着いた。手入れのされた垣根が落ち着いた印象を与える。藤色の暖簾をくぐり、帳場で名前を告げる。
「岡本裕子・・・か林珠子で予約していると思うのですけれど・・。」
艶っぽく、濃い口紅をひいた仲居さんが帳簿をめくる。
「おかもとさま・・・はやしさま・・・。はやしたまこさま?」
「はい、2名でお願いしてあるはすです。」
「はい、承っております。お連れ様はまだのようですがお部屋までご案内いたしますか。」
「ええ、お願いします。」
つやつやとよく磨かれた年季の入った廊下をうねうねと歩く。木々の葉の擦れる音と自分たちの足音の他に何も聞こえなく、仲居さんの白い足袋と床のこげ茶色がくっきりと分かれて見える。
すごく素敵かも!部屋に通され、宿の説明を一通り受けた私は、部屋の中を歩きまわりながらドキドキしていた。大きな窓の外には縁側がついていて、小さな庭とぐるりを木々が覆っている。縁側の右の方は屋根付きの露天風呂に続いていて、天然の大きな岩をくりぬいて作ったという風呂には湯がなみなみと張ってある。これはもう、はいるしかないだろう。たまこには悪いけれど、お先に頂いちゃおう。私は、鞄から電車内で買って余ったビールをだし、お風呂のふちにおいた。ついでに甲府の駅前で買った桃ワインを部屋の冷蔵庫に無理矢理おしこんだ。 |