| 3.連載小説・第5回 Sweet escape |
| (Text by 上岡千伽子 / Illustration by 稲田真理子) |
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ぷしゅっ!
極楽じゃ〜♪木の間から差し込む西日に時々、目を細めながらぬるくなったビールを飲む。つまみに道中で折れまくって短くなったプリッツをポリポリかじる。去年、たまこと温泉にきた時、私は職場の人間関係に悩んでいたんだよなぁ、と思い出す。たまこに話したら笑い飛ばされたっけ。
「昼ドラみたいな女だね、そいつって。ユウに飽きたらすぐ次のクルーにはいるよ、そんなやつ。だってユウが入社して2年経つのに今更そんなのおかしいよ、最近、誰か辞めたでしょう?」
そういえば先月、先輩がひとり転職していった、と答えると、そいつの代わりにいびられてんだよ、くだらないー、今時そんな人いるんだぁ、テンネンキネンブツブツブ〜♪たまこがあまりにバカにするからだんだん気楽になっていった。帰ってから改めてその人の行動を見ていると確かに昼ドラみたいに典型的で、だんだんそいつにはっぱかけられるのが退屈な職場のちょっとした楽しみみたいになってきて、そうこうしているうちに相手は勝手に最終回を迎え、次のクルーに入っていた。今度の共演者は先月中途入社した子だ。ちなみに内容は私の時とほぼ変わっていない。まだ治ともつきあっていた。別れたこと、たまこにまだ言っていなかった気がする。おどろくな?それとも、ユウには合わないと思っていたんだよね、と訳知り顔でいうだろうか?治と別れた理由を話したら笑われるんだろうな。当の本人の私ですら、笑ってしまうもの。案外、泣いてくれたりして。たまこは、誰かとつきあっていたんだっけ?あのこ、けっこう秘密主義だからなぁ。 |
| 空に灰色と青みがかかり、月が冴えてきた。ちょうど円の半分の形の月。黒い影だけの鳥が数羽、目の前の林から飛び立ち、闇の始まりに消えていく。いいかげん、のぼせそうで私は湯をでる。バスタオルを巻いて空き缶片手に部屋に戻る。たまこ、いつ着くのだろう?とほろ酔いの頭で思う。ふわふわする〜、と部屋に戻るとそこに見慣れない荷物を発見。なんだ、たまこ、着いてるじゃん。トイレから水を流す音がして、こちらに向かう足音が聞こえる。私はたまこを笑かそうと、とっさにグラビアアイドルのようなセクシーポースを決める。すっとふすまの開く音がして、たまこに背を向けて横座りしていた私は半身をねじり「どきゅーん。」と指鉄砲をたまこに向けた。 |
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